Special座談会
「これからの高速道路の
話をしよう」

物流、地域活性化、救命・災害支援など、
高速道路は社会インフラとしていくつもの役割を担っています。
その中でも、日本の経済活動の軸となる「物流」に注目し、
物流、流通事業を手掛ける企業の方々と一緒に、
これからの高速道路について話し合いました。
そこから見えてくる、これからの高速道路の姿とは?

イオン株式会社
グループ総務部 部長
株式会社生活品質化学研究所 監査役 兼
イオンディライト株式会社 監査役

津末 浩治 様

NEXCO西日本
経営企画本部 経営企画部 次長

永田 順宏

アートコーポ―レーション株式会社
(アート引越センター)
CS 推進室 室長

川田 成樹 様

TALK 01 物流動向と高速道路TALK 01 物流動向と高速道路

NEXCO西日本
永田
NEXCO西日本は高速道路の建設や保全を通じ、経済活動の担い手である企業の皆様の取り組みを支えていくことが重要な使命だと感じています。高度化、多様化が進む物流・運送事業の現状や課題、その解決のための取り組みについて、それぞれお聞かせいただけますか?
アートコーポ
レーション(株)

川田様
アート引越センターは、国内で初めて「引越」を専業とする会社として誕生した企業です。お客さまの声としていただく「あったらいいな」をかたちにすることをビジネスの起点として、「エコ楽ボックス」や「レディースパック」をはじめ、様々なサービスを生み出してきました。現在、物流全体でもっとも多いニーズは、「より早く、より便利に」。
それに応えるために、業界では大型物流センターの構築やICT活用がトレンドになっています。当社でも、数年前から物流拠点を増やすと共に「電子配車板」などのシステムを導入し、よりお客さまのニーズに応えられる体制を整えています。
イオン(株)
津末様
イオングループは、世界13ヶ国に約300社、従業員数52万人を有する流通企業グループです。お客さまを原点に、地域社会に貢献することを経営の基本においています。店舗に関してはみなさんご存じかと思いますが、物流の観点からお話しますと、当社には「イオングローバルSCM」という、物流センターの管理・運営、物流業務などを行う、機能子会社があります。この会社が、積載効率や配送の最適化といった物流システムの構築や、近年課題となっているドライバーの労働環境改善などを進めています。
その取り組みの一つとして、本年6月から、化粧品・トイレタリーメーカーと提携し、関東と中部の中継地点でトレーラーの積荷を交換する「中継輸送」を開始しました。これにより、一回で運ぶ物量も増え、ドライバーの労働時間も半分になりました。
川田様
津末さんのおっしゃる通り、ドライバー不足や労働環境改善については、物流業界全体の大きな課題です。定められた運行管理の遵守はもちろんですが、お客さまの多様なニーズに応えていく中で、うまく折り合いをつけていく方法を考えていくのが、業界全体で求められています。
より早く、限られた時間の中でお届けするために、高速道路の活用は必須だと感じています。以前から、ETCの導入や「新名神高速道路」をはじめとする新しい道路の整備によって、移動距離や時間の短縮、走りやすさが向上しているように思います。
永田
やはり企業の皆様は、よりよいお客さまサービスを実現するために、様々な活動をされているということですね。私たちもグループ理念「高速道路の安全・安心を最優先に、お客さまの満足度を高め、地域の発展に寄与することにより、社会から信頼され成長する企業グループをめざします」を掲げており、できるだけ、その活動を支えることができるよう努めていきたいと考えています。
川田様がおっしゃった、移動距離や時間の短縮ということについては、現在建設中の「新名神高速道路」の事例でご紹介します。全線開通は2023年度の予定ですが、それに先立ち本年(2017年)秋には、高槻JCT〜川西ICまでを、来年(2018年)春には、更に神戸JCTまでの開通をめざして工事を進めています。このネットワークが完成すると愛知県の豊田から神戸までの距離が縮まり、所要時間も30~40分短縮されます。勾配やカーブも緩やかにしているので、ドライバーさんにも走りやすい道路になると思います。
津末様
それは、ありがたいですね。それでは、多様化という点ではいかがでしょうか?
経済情勢や人口動態が変化する中で、我々のショッピングセンターも様々な点を変更しています。例えば、視認性を高めた案内表示やPOP、エスカレータのスピードの調整、そして警備スタッフの男女比率も変わりました。女性警備員が増え、休憩室などを新たに整備しました。物流の現場でも、女性のドライバーが増えています。今後、性別だけではなく、外国の方など、多様化していくと思いますが、それは、高速道路も同じではないでしょうか?
川田様
そうだと思います。当社は、もともと業界の中では女性スタッフが多い方ではありますが、女性が働きやすい事業所の方が、活気があり、人が集まりやすい傾向にあります。
永田
女性のドライバーさんが増えているということですが、当社ではサービスエリア・パーキングエリア(SA・PA)のトイレ改修を積極的に進めています。トイレの数を増やすだけでなく、女性用パウダールームなどの例もありますが、清潔感、快適性の更なる向上にも取り組んでいきたいと思っています。
また、外国の方に向けたサービスの向上としては、SA・PAで、多言語対応の地図などの翻訳ツールを用意し、スムーズなコミュニケーションが取れるようにしています。

※ 未開通区間のため、JCT・IC・SA・PAの名称は仮称となります。

TALK 02 災害・非常時に高速道路が果たす役割TALK 02 災害・非常時に高速道路が果たす役割

永田
2016年4月の熊本と大分の地震は、震度7クラスが短期間に連続して2回発生するという、これまで経験したことがないものでした。緊急輸送路としての使命を果たすべく、地震直後から被災箇所の点検確認と共に早期復旧に努めました。イオングループさんも発災直後から屋外駐車場などで物資販売を続けるなど、地域の方々に向けて対応されたと伺っています。
津末様
私はグループの防災やリスクマネジメントの担当者として、震災や自然災害などの非常時でも、生活物資をいち早くお客さまにお届けできるよう、ICT などのテクノロジーの活用や産官学民連携の新たな仕組みを構築するなど、様々な取り組みを推進しています。例えば、毎年春と秋の年2回、52万人ものグループ社員全員が参加する「イオングループ総合地震防災訓練」を実施したり、約60社のメーカーと協働し、大規模災害発生時に商品を迅速に届けるための「イオンBCPポータルサイト」を構築したり、鉄道、航空、船舶企業などと緊急時の物資輸送の覚書を締結するといった取り組みです。
実際、2016年3月に航空会社と「緊急物資の輸送に関する覚書」を締結し、物資輸送の訓練を行ったのですが、その1ヶ月後に熊本地震が発生してしまい・・・。
ただ、訓練の中で顕在化した課題を修正し、進化させたことで、イオンの支援物資を熊本空港へのチャーター機をふくむ計49便を使用して被災地へ運び、発災直後から復旧、復興にむけて、地域のお客さまのために貢献することができました。
川田様
非常時こそ、お客さまのために何ができるのかが問われますね。熊本は、とても引っ越しができる状況ではありませんでした。引っ越しする住居さえも・・・。
我々も人海戦術でお客さまのために何ができるか考え、行動しました。役員と社員で益城町に出向き、現場で焼肉弁当を作って地域の方々にお配りしました。
津末様
高速道路は、平時もさることながら、有事の際も重要なライフラインです。今回の熊本地震において、530万個の物資を1ヶ月で届けることができましたが、東日本大震災のときは2ヶ月もかかりました。大きなトラックだと、高速道路を下りてから現地に向かうことができなかったという教訓から積載方法などの課題を洗い出し、改善しました。
永田
私たちも高速道路は重要なライフラインだという認識を持っていますので、いかに早く復旧させるかが一番の使命だと思っています。熊本地震ではNEXCO西日本グループ一丸となって、24時間体制で復旧作業を行いました。1995年の阪神・淡路大震災以降、耐震補強を行ってきたこともあり、高速道路の落橋という致命的な被害は免れました。
その甲斐あって、熊本においては2日後に緊急車両の通行が可能となり、約2週間後には一部交通規制を伴ってではありますが、一般開放することができました。耐震補強は地道な準備ですが、大切な備えであることに間違いありません。予防策を講じて信頼性を高め、いざ被災した場合にも、できるだけ早く復旧することに全力を尽くしたいと思います。
川田様
東日本大震災の後、現地へ行ったときのことですが、高速道路を境に、海側と山側の景色がまったく違っているのを見て、まったく言葉が出ませんでした。津波を想定していたわけではないと思いますが、高速道路が津波の防波堤の役割を果たし、地域の方々の命を守ったのです。
永田
高速道路の防災機能として、津波対策に注目が集まったのは確かです。
現在、四国や九州などの自治体と協働し、道路の盛土区間に津波避難所を設置するなど、高速道路の空間を地域の方にご利用いただくような取り組みも進めています。
津末様
災害発生時、総合小売業者として一番困ったのは、燃料です。非常時は、広範囲で車輌調達を行うため、東北の震災の際も、関西から物資の供給をしました。でも、東北での燃料供給ができないため、トラックはあるが運べないという事態になりました。高速道路上での燃料供給についてご検討いただければ幸いです。
川田様
燃料を求めてドライバーは夜を徹して給油スタンドを探すという状況でした。有事の際の燃料をどう給油するかは、社会全体での課題ではないでしょうか?
永田
そのとおりだと思います。国においてもこの課題解決のために、災害時の燃料供給拠点となる「中核給油所」の指定と整備が進められています。高速道路のガソリンスタンドは全てその指定を受けており、緊急車両が優先とはなりますが、災害時にも安定的な燃料供給が可能となるよう配慮されています。停電時でも使える大型自家発電装置や電気自動車用の急速充電器などの整備も進めています。
川田様
それから、複数のルートがあるというのは、重要だと思います。東日本大震災のときは、高速道路が全部通行止めだったので、新潟から磐越道、東北道に入って・・・と、大きく迂回しないと現地にたどり着けない状況でした。先ほどの「名神高速道路」と「新名神高速道路」の整備により、片方が止まっていても、もう一方が使えるのであれば、ありがたいですね。
永田
ダブルネットワーク化として代表的な路線でいうと、「新名神高速道路」は「新東名高速道路」と共に、国土軸の一部としてリダンダンシー機能(自然災害などに備え、あらかじめネットワークを多重化するなどして、一部区間の途絶が全体の機能不全につながらないようにすること)を担っていますが、これは高速道路に求められる重要な機能の一つと考えています。また、特に地方部では、暫定二車線(片側一車線)の道路もまだ多くありますが、四車線化や渋滞のボトルネックとなる箇所に車線を追加するなどの機能強化も進めています。

TALK 03 高速道路の未来のカタチTALK 03 高速道路の未来のカタチ

津末様
もし、実現可能でしたら、最初にお話した「中継輸送」が、高速道路上でできればありがたいですね。イオングループは、在庫機能を持った物流センターを全国に40以上超設置していますが、総じてインターチェンジの近く。そこでトレーラーのシャシーの部分だけを変えています。高速道路の中に専用レーンがあれば、メリットは大きいかと。
川田様
確かに、積み替えや中継のできるスペースがあると、物流事業者としてはありがたいですね。よりスピードアップが図れると思います。
永田
「中継輸送」についてどこまで我々がお手伝いできるかは大きなテーマで、SAなどにそういった専用スペースを提供できれば、大いにお役にたてるものと思います。混雑しているエリアでは広さの問題もあり、一般の利用者の方もいらっしゃるので、安全性なども確保した上でそれを実現するのは、いろいろ知恵をしぼらなければならないところです。
津末様
一方で、現在、経済産業省、国土交通省が中心となり、高速道路などの特定道路における隊列走行の実現をめざした取り組みが産・学・官で検討されていますね。これは、ドライバー不足の解消の手段として期待できるのではと考えています。
永田
トラック輸送の省人化促進については、国土交通省の主導で2016年秋より実証実験が進められています。コンテナ部分を連結させたトレーラーを群馬から名古屋まで「新東名高速道路」を使って走らせて安全性などについて検証し、車両の規格緩和などが検討される方向で進んでいます。
川田様
次のステップとしては、自動運転でしょうか?そう遠くない未来に実現するのだろうと感じています。そこに高速道路は必要不可欠ですよね?
個別配送となるとまだまだクリアしなければならない壁がたくさんありそうですが、インターチェンジ近くの大型物流センター間同士をつなぐのであれば、実現性が高いと思います。
津末様
おっしゃる通り、大型物流センター間の定期便がそれで補えるなら、ドライバーの負担軽減が図れますね。物流事業の課題である、雇用や労働に関する問題の解決につながると思います。
永田
将来的なキーワードとして、自動運転というのは間違いなくあると思います。自動運転は、自動車側の技術が先行していて、インフラ側で何ができるかは今まさに研究が進められているところです。「新名神高速道路」や「新東名高速道路」は、初期コスト低減の観点から現在四車線で建設運用している区間が多くありますが、将来的には六車線での運用も視野に入れています。
私自身の夢やイメージ的なことでいいますと、そのときに、追加する車線は自動運転トラックなどの専用レーンにするようなやり方もあるのではないかと。いろいろな制約はあると思いますが、物流の課題を解決し、社会全体の効率化に貢献できればいいと考えています。国と歩調を合わせ、高速道路でできることの可能性を広げていければいいと思います。
津末様
イオンモール幕張新都心では、来店者向けに自動運転車「ロボットシャトル」を運行し、移動サービスを提供しています。非常に多くのお客さまにご利用いただいています。
永田
そういったことが、いつか高速道路上でできるといいな、と思いますね。これから、先ほどの隊列走行なども含め、様々な実験的な取り組みが出てきます。そういう実験の場として「新名神高速道路」を活かすことができればと思います。
川田様
今日、ここに来る前に考えていたのは「高速道路におけるCSって何だろう?」ということでした。私は、社内でCSを推進する立場。毎年スローガンを掲げ、活動しているのですが、今年(2017年)はちょっと時流に乗っかった感じがしますが「お客さまファースト」がスローガン。ただの標語でなく、実践できるものとして設定しました。
今日、話を伺う中で感じたのは、高速道路の究極のCSは“安全”なのだろうと。そしてこれは、未来永劫きっと変わらないのではないかと思いました。毎日あたりまえのように安全に利用させていただいています。これからもそうあり続けていただきたいと思うところです。
永田
ありがとうございます。グループ理念の通り、私たちは「安全・安心」が最優先。日頃の点検、維持補修を大切に考え、いざ、災害が起きたときにはいち早く対応するということ。
このことを通じて信頼性を高めていく、これが一番の基本にあるところです。
また、高速道路の老朽化が問題になっていますが、最新技術を用いた高速道路のリニューアルプロジェクトで、未来につながる道づくりを進めています。
津末様
アートコーポレーションさんもNEXCO西日本さんもそうだと思いますが、我々の事業の公共性がますます高まっていると思います。平時は、お客さまに対するアミューズメント性を高め、楽しみといった価値を提供。そして有事は、我々の連携によって緊急対応をスムーズに行う。
ぜひ、NEXCO西日本さんとも協働し“地域のお客さまにとって、なくてはならないもの”を提供できればと思っています。
永田
ありがとうございます。事業フィールドは違っていても、私たちが共にめざしているのは“地域のお客さまにとって、なくてはならない存在となること”ですね。
NEXCO西日本は“あるのがあたりまえ、なくてはならない高速道路”から更に一歩進めて“こんなカタチになったらいいな”を実現しながら、これからも社会と地域の発展にお役にたてるよう高速道路事業を推進していきたいと思います。