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ニュースリリース

ライフサイクルコストの最小化を目指した橋梁老朽化対策について
― プレストレストコンクリート床版を活用した全面補修事業を実施します ―

平成20年10月27日
西日本高速道路株式会社

 NEXCO西日本(大阪市北区、代表取締役会長CEO:石田 孝)は、100%の安全・安心への取り組みの一環として橋梁のさまざまな老朽化対策に取り組んでいます。

 橋梁の老朽化対策は、詳細点検に基づき橋梁の健全性評価を行い、最適な補修工法を選定し適切な時期に対策を実施しています。
 このように計画的な老朽化対策に取り組んでいるものの、NEXCO西日本で管理している高速道路は平均で供用後21年、そのうち22%は供用後30年を越えており、交通特性(交通量・大型車)の変化及び冬季における凍結防止剤の散布による塩害により、特に橋梁床版部の老朽化が進行しています。
 これらの床版部の老朽化対策として、床版部分打替えや床版増厚対策を実施しておりますが、より一層のライフサイクルコスト(以下、LCC)の最小化を目的として、より高品質かつ高耐久な材料であるプレストレストコンクリート床版(以下、PC床版)を活用した全面補修事業を試行します。
 今後この補修対策の効果検証を行うとともに、新工法・新技術の積極的な採用によりLCCの最小化を目指した橋梁老朽化対策の確立を目指してまいります。

1.橋梁の現状

 NEXCO西日本が管理している橋梁2,996橋のうち、開通後30年を経過している橋梁は現時点で約650橋(22%)であり、今後益々30年を超える老朽化した橋梁は増えています。
NEXCO西日本管内橋梁数 2,996橋(平成20年9月末現在)

2.橋梁の老朽化対策に対する取組み方針

1)損傷箇所の部分補修や予防保全対策

 橋梁の老朽化による主な損傷は、床版部の劣化や橋桁端部の劣化であり、これらの補修対策として床版部分打替え・床版防水工・桁端部防水工・橋梁洗浄等の補修対策を実施しており、平成19年度においては約75億円の対策を実施しました。
主な損傷状況
主な損傷状況
主な補修対策
主な補修対策

2)床版耐荷力・耐久力の向上(延命対策)

 一方、名神高速道路等の重交通路線では床版劣化の進行が著しく、床版部分打ち替えでは十分な健全性が確保できず、補修対策後短期間で舗装に損傷(ポットホール発生)が発生するなどの再劣化を繰り返す橋梁もあります。
 このような橋梁には、既設コンクリート床版の床版厚さを増して床版全体の耐荷力・耐久力向上を図る床版増厚対策も実施しております。具体には名神高速集中工事(本年5月)で実施した竹田高架橋(京都東インターチェンジ(IC)~京都南IC間)、中国道集中工事で現在実施中(2008年10月15日~2008年10月30日)の神田高架橋及び川西高架橋(中国池田IC~宝塚IC間)等です。
床版増厚対策
床版増厚対策

3)更なる高耐久抜本対策の実施

 今後、老朽化による補修が必要な橋梁は益々増加することから、LCC最小化を目的として、初期の補修対策でPC床版を活用した床版取替えを実施することも検討しており、中国自動車道 青津(あおつ)橋(東城IC~庄原IC間)の老朽化対策においてパイロット工事としてPC床版を活用した床版全面取替え工事を実施します。(予定工期2008年10月~2010年3月)
 青津橋の老朽化対策として、従来実施してきた床版部分打替え対策及び床版増厚対策による補修対策と今回実施するPC床版による補修対策とをLCCで比較したものが下記のグラフです。
 青津橋の補修対策として、劣化している床版の部分補修費用は約1億円であり、PC床版による全面取替えによる補修費用は約4.5億円となり約3.5億円の初期費用が増加しますが、協定期間末(平成62年)までのLCCを比較すると、PC床版による補修対策は名目値(対策費用の累計額)で約7.5億円(約6割削減)、現在価値で約2.5億円(約3割削減)のLCCの削減が可能と推計しています。また、PC床版による補修対策は初期投資は高額となりますが、約15年で対策費用累計額は逆転します。さらに、補修工事に必要な大規模な交通規制も大幅に回数を削減でき、お客さま等への影響も少なくできます。
グラフ

3.今後の取組み

 名神高速、中国道、近畿道及び西名阪道等においては、今後経年変化や重交通による老朽化は避けられず、PC床版を活用する等の抜本的な補修対策も必要になります。しかしながら、PC床版を用いた床版取替え工法では、長期間の通行規制を伴います。このため、新名神(亀山~草津田上間、高槻~神戸間)や第二京阪道路(枚方東~門真ジャンクション間)の開通により代替路線を確保することにより、これら道路の橋梁における有効な老朽化対策が可能となります。
 NEXCO西日本では、今回の事業効果や他の先端技術の開発動向を見定めながら、引き続き更なるLCCの最小化に向けた取り組みを進め、これらを今後の橋梁補修事業に関する中期経営計画に反映していく方針です。
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