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ニュースリリース

トンネル覆工点検システムの開発について

平成26年7月30日
西日本高速道路株式会社
西日本高速道路エンジニアリング九州株式会社

NEXCO西日本(本社:大阪市北区、代表取締役社長:石塚 由成)と西日本高速道路エンジニアリング九州株式会社(本社:福岡市中央区、代表取締役社長:早川 和利)は、トンネル覆工の点検をより効率的に実施することのできる点検システムを開発しました。

1.NEXCO西日本の技術開発

NEXCO西日本では道路の維持管理作業の効率化や健全度評価の精度向上をめざし、点検に関する技術開発を推進しています。近年では、デジタルカメラ等を用いた橋梁床版のひび割れを検出するシステムや、トンネル並びに土構造物における非破壊検査技術などの開発を進めています。

2.今回の研究開発の目的

トンネル内での目視点検状況(例)

開発した撮影用車両

安全安心を確保するため、トンネルの定期点検は近接目視を基本とし、必要に応じて触診や打音の非破壊検査等を併用しており、今後も引き続きこれに重点をおいて実施してまいります。

また、従前からNEXCO西日本では、走行する車両から覆工コンクリートの画像撮影を行い、ひび割れを把握する技術を用いて、定期点検の効率化を図ってきました。

従来技術の画像撮影に用いる車両は、ハイビジョンカメラを搭載しており、80km/hで走行しながら覆工コンクリート表面画像を取得し、その後ひび割れ展開図注1)を作成することにより変状の程度を定量的に判定していました。ここでひび割れ展開図の作成は撮影した画像を見ながら人力で実施しているため、多大な時間と費用を費やしていました。

そこで、本研究開発は、ラインセンサカメラ注2)を用いて、自動でかつ短期間にひび割れ展開図を作成するシステムの構築により、i)経費節減を行うとともに、ii)危険な箇所の抽出を早期に実施し、iii)検出精度の向上を図りました。さらには撮影方法の改善により、お客さまの安全安心の向上を図りました。

注1)ひび割れ展開図:
トンネル覆工コンクリートのひび割れをトレースした図面
注2)ラインセンサカメラ:
線状にセンサが設置されたカメラ。1列の画像が撮影可能。

3.今回の技術の特徴

今回開発したシステムの改良点は以下のとおりです。

  1. ラインセンサカメラによる撮影可能速度の向上
  2. 赤外線照明による照明光の不可視化およびひび割れの認識の向上
  3. ひび割れの自動検出および展開図の自動作成
項目 従来技術<ハイビジョンカメラ> 開発技術<ラインセンサカメラ>
撮影方法
  • 撮影可能速度80km/h以下
  • 後尾警戒車両 必要
    (メタルハライドランプ照明)
  • 撮影可能速度100km/h以下
  • 後尾警戒車両 不要※1
    (赤外線照明)
検出精度
  • 0.2mmのひび割れを目視認識可能
  • ひび割れ 手動検出
  • 苔、スス部分のひび割れ検出不可能
  • 0.2mmのひび割れを目視認識可能
  • ひび割れ 自動検出※2
  • 苔、スス部分のひび割れ検出可能※3
費用
  • 撮影
130円/m
  • 画像、展開図作成

800円/m
930円/m
  • 撮影
160円/m
  • 画像、展開図作成

440円/m
600円/m
作業期間
(トンネル20kmあたり)
6ヶ月 2ヶ月

覆工コンクリートの撮影状況

覆工コンクリートの撮影状況

撮影画像の精度

撮影画像の精度

※1:
トンネル覆工画像の撮影には赤外線照明を採用しており、肉眼では見えません。よって、撮影用車両の後尾警戒車両が不要となりました。トンネル覆工のひび割れ撮影車両で後尾警戒車両を必要としないのは日本で初めての事例です(当社調べ)。
※2:
撮影画像から0.2mmのひび割れを自動で抽出することが可能となりました。
※3:
赤外線光の採用により、可視光では確認できなかった苔やススに覆われたひび割れが確認できるようになったのは日本で初めての技術です(当社調べ)。
※4:
撮影装置自動制御方式について特許申請中。
申請者は、エンジニアリング九州(株)、エンジニアリング関西(株)、(株)エルゴビジョンの3社。

4.今後の取り組み

今年度は、現地において試験走行により精度の検証等を完了させ、平成27年度から本格運用を開始する予定です。