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平成26年の篳篥用ヨシ採取エリアの現状について
例年になくつる性植物(カナムグラ等)が繁茂し、篳篥用ヨシの倒伏が顕著であることから、地元の方も今冬の採取への影響を懸念している状況である。
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(2)
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篳篥用ヨシの生育に関する調査(平成26年度 ヨシの生育調査速報)
本年7~8月に実施したヨシの生育調査(草丈・茎径測定等)結果と調査地点における導水時の冠水状況、標高、土質構成から考察を行い、以下について確認した。
陸域※1のヨシと水域※1のヨシを比較すると、
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陸域は水域に比べてヨシの草丈が高く、茎径が太い個体の占める割合が高い。
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篳篥用ヨシと同程度の茎径(11~12mm)のヨシは陸域・水域ともに確認されている。
篳篥用ヨシは陸域のみで採取されることから、陸域のヨシに着目すると、
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標高が低い箇所ではヨシの草丈が低い傾向にあるが、標高と篳篥用ヨシと同程度の茎径(11~12mm)個体との関係は不明瞭である。
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シルト層の下に砂質土層がある箇所ではヨシの草丈がやや高い傾向にあるが、シルト層の厚さとヨシの草丈や茎径との関係は不明瞭である。
上記確認結果を受けて、以下の点について留意し、引き続き調査を進めることとする。
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今冬のヨシ刈取調査時に草丈・茎径に加えてヨシの乾燥重量等について測定する。
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調査地点の微地形について確認する。
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調査地点の土質構成(土壌硬度等)について整理を行う。
※1 「陸域」「水域」については
資料2-(1)(2,958KB)
を参照
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各委員からは、下記のご意見および検討すべき課題を頂戴した。
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調査地点の微地形について確認を行うこと。
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同じシルト層で土壌硬度が異なる状況が見られるが、その形成に関する経緯についても確認すること。
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篳篥用ヨシの生育環境がその他のヨシの生育環境と異なるという前提で議論するべきである。
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例年になくカナムグラが繁茂している理由としては、昨年鵜殿が冠水した際に堆積した土の影響も考えられる。
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(3)
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土壌水分・地下水位測定と地下水流動に関する検討
導水時における浅い砂質土層での地下水位確認を目的とし、鵜殿ヨシ原に浅層観測孔を設置したが、地下水位は確認されなかった。
鵜殿ヨシ原において導水前後での地下水位の変動を全体的に把握するため、三次元浸透流解析を行い、以下について確認した。
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導水前は淀川河川水位とほぼ同等の地下水位が形成されているが、導水時は導水路から河道流水部に向かって地下水位が低下する傾向である。
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導水路に対し比較的標高が高い篳篥用ヨシ採取エリアにおいては、ヨシ地下部の掘削調査時に確認したヨシの根系の最深地点より、導水時の地下水位が低いことから、ヨシの根系に対する水分供給は地下水よりも降雨が主体的であると推察される。
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各委員からは、下記のご意見および検討すべき課題を頂戴した。
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浅い砂質土層で地下水位が確認されないことや過去の調査結果において粘性土層は比較的透水性があることから、導水路の水が下に浸透していることが推察される。
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この解析モデルは非常に多くの地質調査結果を用いて作成されており、現況の地下水位の動きをよく再現できている。
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(4)
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鵜殿ヨシのDNA分析結果
鵜殿ヨシ原において採取した検体(ヨシの葉)を用いてDNA分析を行い、以下について確認した。
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篳篥用ヨシ採取エリアでは15検体中10種類のクローン※2が確認されたことから、篳篥用ヨシは一つのクローンではない。
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検体を採取したヨシを地元の方に確認した結果、同一クローン群でも篳篥用に適するものと適さないものがあった。
※2 「クローン」とは「遺伝的に同一の個体」を指す。
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各委員からは、下記のご意見および検討すべき課題を頂戴した。
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篳篥用ヨシは特定のクローン群ではないと判断できる。
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篳篥用ヨシに育つ条件は生育環境に起因すると考えられる。
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(5)
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その他
オブザーバーから篳篥用ヨシに対する高速道路の影響についての質問を受け、採取エリアは計画路線から南側に離れているものの、今後、具体的な高速道路事業の影響について検討を進めることとした。