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トップメッセージ

トップメッセージ / 西日本高速道路株式会社 代表取締役社長 芝村善治

事業を取り巻く経営環境

2024年度の高速道路を取り巻く経営環境の変化として大きなものは「2024年問題」への対応が挙げられます。2024年4月に働き方改革関連法が施行され、建設業・運輸業における時間外労働の上限規制が始まり、各業界に大きな変革がもたらされました。当社グループとしても、建設業の働き方改革と工事円滑化の実現に向け、2024年3月に「工事管理スリム化ガイド『4-you』」と行動宣言を策定し、業界の皆さまと意見交換を重ねながら、デジタル技術の活用や業務プロセスの見直しなど様々な施策を実行しています。運輸業に対しては、休憩施設の大型車駐車マスの拡充など、確実な休憩機会を確保するための取り組みを継続しています。働き方改革は一朝一夕で完了するものではありません。引き続き、高速道路をつくる側・つかう側双方の課題やニーズの変化に対応し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

2024年問題とあわせて特に重要な課題が「工事の安全管理」です。当社グループでは、2016年の新名神建設工事における有馬川橋橋桁落下事故を契機に、受発注者が協力して重大事故防止の安全対策を講じる重大事故リスクアセスメントを定め、安全・安心を最優先にすることをグループ理念にも掲げて事業に取り組んできました。しかしながら、2025年1月に中国道鷹の巣橋のリニューアル工事において吊足場が崩落する工事中事故が発生し、その後も重大事故が続発したことから、改めて、決して重大事故を繰り返さないという決意のもと、工事の安全管理の徹底について受発注者間で確認を行い、安全対策を強化しました。“安全は全てに優先する”。これは当社グループの事業を進める上での根幹を成すものです。また、「安全」はサステナブルな社会の実現に欠かせないものでもあります。高速道路の進化を推進するために、工事の安全管理と働き方改革、工事の円滑化を同時に実践するべく、重大事故を防止する不断の努力を続けてまいります。

民営化20周年

2025年10月に、当社は設立20周年の節目を迎えます。この間、私たちは、24時間365日、安全・安心な高速道路の維持管理に加え、新名神をはじめとした新規建設や4車線化、高速道路リニューアルプロジェクト、SA・PAにおける物流支援や魅力向上など、多くの事業を着実に実現してきました。激甚化する豪雨や地震等の自然災害に対しても経験値を積み重ね、耐震補強などの災害対策や迅速に復旧を行う災害対応力を磨いてきました。また、2025年度は中期経営計画「進化2025」の5ヵ年の最終年度でもあります。2025年度は、これまでの歩みを振り返りつつ、新たな5年、次の20年を見据えた第一歩とする、そのような年にしたいと考えています。変化していく経営環境や新たなモビリティ社会の到来に対して、限られた資源を有効に活用しながら、高速道路の安全・安心と新たな価値を提供し続ける。そのために当社グループが取り組むべき事業を、次期中期経営計画として策定してまいります。

DX実装の定着の年

民営化時と比べ3倍を超える規模となっている事業量に対応し、中期経営計画「進化2025」を着実に推進するため、「経営資源の柔軟かつ最適配分」、「多様な人財の活躍」、「更なる生産性の向上」の3つの柱からなる「進化に挑む重点方針」を基本として、会社全体の業務執行能力の向上に取り組んでいます。そのうち、生産性の向上にあたっては、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が不可欠です。当社グループでは、DX戦略を「NEW ACE DXs(先進的な挑戦と進化がDX戦略を推進する)」(※)と定め、グループ一丸となって推進しています。2025年度は「DX実装の定着の年」とし、 DXに必要となる基盤を整備すべく「グループ全体のIT最適化」を実現します。グループ会社とのIT環境統合によるファイルサーバの共同利用など、新たな業務環境を整備することで、更なる生産性の向上を実現してまいります。

※ NEW ACE DXs:「NEXCO West」の頭文字と「Advanced Challenge and Evolution will drive DX strategy(先進的な挑戦と進化がDX戦略を推進する)」からなる当社グループのDX戦略の略称

人とともに進む

当社グループにとっての最大の資産は、社員そのものです。変化し続ける社会に応じて高速道路が進化し続けていくためには、ノウハウの集合体である社員が、多様な発想とチャレンジ精神を持ち、最大限の力を発揮することが欠かせません。失敗を恐れることなく、チャレンジし、未来を切り開いていく多彩な「人財」を育成することが、当社グループと社員一人ひとりの成長にとって重要であると考えています。そのため、社員が安心して長く働き続けられる会社とするべく、社員同士が何でも言い合える風通しの良い明るい職場環境づくりや、それぞれのライフスタイルに合わせて自らキャリアを選択し能力を高められる環境整備に取り組んでいます。

地域の新しい魅力づくり

多様化する地域課題に対し、地域と連携して地域創生を目指す「地域共創」活動は、2025年度で6年目を迎えました。代表的なプロジェクトである「旅っチャ」は、地域の飲食店などで使えるクーポンが入った小型チケット販売機をSA・PAに設置し、広域的に地域へ誘客を図るもので、九州を起点に始めたものが、2024年度には管内各地にて自治体との連携実績を生み出しました。このほか、「動くサービスエリア」など多種多様なプロジェクトを展開しています。オーバーツーリズムが社会問題化する一方、依然として観光振興へニーズが高い地域も多くあります。人と地域をつなぐ当社グループのノウハウを活かして、地域とともに新しい価値をつくる「地域づくりのプラットフォーマー」を目指し、引き続き挑戦してまいります。

環境経営の推進

2008年から環境経営を推進しています。「環境基本計画2025」では「脱炭素社会の実現」、「循環型社会の形成」、「自然と共生する社会の推進」を3つの重要テーマとして定め、事業活動の様々な側面におけるアクションプランを立て、環境負荷の低減に取り組んでいます。また、気候変動対策として重要なカーボンニュートラルの実現についても、2030年度までに温室効果ガス排出量を50%以上削減することを目標とし、ネットワーク整備等による円滑な交通確保、電気自動車急速充電設備の増設や、道路空間を活用した省エネルギー化等を推進しています。

持続可能な社会の実現に向けて

当社グループでは、CSR活動方針を「事業活動を柱として、社会の持続的な発展に貢献します」と定めています。高速道路の進化に挑み続けることにより社会インフラの機能を更に高め、我が国の持続的な発展と豊かな未来の実現に貢献することが、NEXCO西日本グループの使命であり、社会的責任であるからです。これは、グループ理念「私たちは、高速道路の安全・安心を最優先に、高速道路の進化に挑み続け、地域の発展と豊かな未来の実現に貢献します」にも共通する精神であり、持続可能な社会の実現に貢献することは、社会インフラを担う者としての責務であると考えています。高速道路の安全・安心の確保、ネットワークの強化、地域との連携、環境経営等、当社グループのあらゆる事業活動を通じて、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組みを推進し、サステナブルな社会の実現に貢献してまいります。

おわりに

これからも、事業活動を通じて、お客さまや、沿道地域の皆さまをはじめとした社会、投資家・国民の皆さま、お取引先、グループ社員等、様々なステークホルダーに対し、社会インフラとしての責任を果たしてまいります。皆さまには、本レポートや当社グループの今後の活動に対して、忌憚のないご意見を賜りますよう、お願い申し上げます。

2025年6月

西日本高速道路株式会社
代表取締役社長

芝村善治