▲ 

トップメッセージ

トップメッセージ / 西日本高速道路株式会社 代表取締役社長 前川秀和

事業を取り巻く経営環境

高速道路を取り巻く経営環境は大きく2つの変化がありました。1つは、新型コロナウイルス感染症対策の変化です。行動制限が緩和されたことで、当社の高速道路の交通量やSA・PA の売上は回復傾向が強まり、2022年度決算では純利益を計上しました。今後、社会や国民の皆さまの行動は、更に変容していきます。当社グループとしても、観光振興と繁忙期の渋滞緩和の両立を目指し、高速道路観光周遊割引をはじめとする各種料金施策の充実を図ってまいります。また、新しいモビリティ社会に対応していくため、新名神高速道路の6車線化やETC 専用料金所の運用、駐車場の混雑対策等による物流支援、電気自動車(EV)急速充電設備の増設等を通して、高速道路の新たな付加価値の提供に取り組んでまいります。

もう1つの変化として、2023 年6 月に公布された、高速道路の料金徴収期間延長等に関する法改正(※1)があります。これは、定期点検及び点検技術の高度化を踏まえた詳細調査により、著しい変状が確認され、新たに更新が必要と判明した約500km、約1 兆円(※2)の更新計画(※3)を追加すること等を目的として行われました。高速道路の安全・安心のためには必要不可欠な事業のため、現在実施している高速道路リニューアルプロジェクトと併せて、着実かつ計画的に更新事業を進めていく必要があると考えております。

我が国の生活・経済活動や文化活動を支える重要な社会基盤である高速道路は、常に社会や環境の変化とともにあります。高速道路が新たな付加価値を提供し、長く安全にご利用していただくためには、気候変動による災害の激甚化・頻発化、技術・学術の発展などの経営環境の変化に柔軟に対応し、また活用できるものは取り込むことで、「進化」し続けることが重要です。2023年度においても、経営環境の変化にしっかりと対応し、着実な事業推進により社会の要請に応え、高速道路の進化を加速させることで、社会インフラとしての使命を果たしてまいります。

※1 道路整備特別措置法及び独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法の改正
※2 東日本高速道路株式会社・中日本高速道路株式会社・西日本高速道路株式会社の3社合計
※3 更新計画の概略については、P.14をご参照ください。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進

高速道路ネットワークの強化や高速道路リニューアルプロジェクト等により、過去最大規模の事業量の継続が見込まれる中、中期経営計画「進化2025」を本格的に推進するため、「経営資源の柔軟かつ最適配分」、「多様な人財の活用」、「更なる生産性の向上」の3つの柱からなる「進化に挑む重点方針」を策定しました。この方針を基本として会社全体の業務執行能力を向上させ、着実な業務推進を図っています。生産性向上にあたっては、DXの推進が不可欠です。当社グループでは、DX戦略を「NEW ACE DXs」(先進的な挑戦と進化がDX 戦略を推進する)※と定め、2022 年度は「DX 実装の年」として約330のメニューに対して取り組みを進めてきました。2023 年度は「DX実装の加速の年」として、この機運を高め、更なる取り組みを推進していきます。

※ NEW ACE DXs:「NEXCO West」の頭文字と「Advanced Challengeand Evolution will drive DX strategy(先進的な挑戦と進化がDX戦略を推進する)」からなる当社グループのDX戦略の略称

地域の新しい魅力づくり

高速道路は、これまで、地域の既存の観光資源等に対しその効果を発揮してきました。私たちは今、コロナ禍を経て、既存市場に依存するだけではなく、地域とともに新しい市場を創造するという役目も担っていく必要があると考えています。そこで、多様化する地域社会のニーズに貢献し、地域創生を目指す取り組みとして、「地域共創」活動に取り組んでいます。「地域共創」活動では、自治体との連携により、小型チケット販売機とSA・PAを活用した広域誘客企画等を展開しています。当社グループと地域がお互いのリソースを活かし合い、観光・文化・産業などの地域の価値を引き出すことで、持続可能な地域づくりにチャレンジする取り組みです。地域社会をより元気にするべく、「地域づくりのプラットフォーマー」を目指し、高速道路の持つ機能やサービスを活用した魅力づくりを続けてまいります。

環境経営の推進

気候変動対策の重要性が高まる中、当社グループにおいても、円滑な交通確保を通した二酸化炭素排出量の削減、電気自動車(EV)急速充電設備の増設や、道路空間を活用した省エネルギー化等、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを推進しています。さらに、当社オフィスを対象とし、2030年度までに温室効果ガス排出量を50%以上削減することを目標とした「温室効果ガス排出削減等実施計画」を、2023年3月に策定しました。

当社グループでは、2008年から環境経営を推進しております。「環境基本計画2025」においては「脱炭素社会の実現」「循環型社会の形成」「自然と共生する社会の推進」を3 つの重要テーマとして定め、事業活動の様々な側面における具体目標(アクションプラン)を立て、環境負荷の低減に取り組んでいます。

持続可能な社会の実現に向けて

当社グループでは、CSR 活動方針を「事業活動を柱として、社会の持続的な発展に貢献します」と定めています。高速道路の進化に挑み続けることにより社会インフラの機能を更に高め、我が国の持続的な発展と豊かな未来の実現に貢献することが、NEXCO 西日本グループの使命であり、社会的責任(CSR)であるからです。これは、グループ理念「私たちは、高速道路の安全・安心を最優先に、高速道路の進化に挑み続け、地域の発展と豊かな未来の実現に貢献します」にも共通する精神であり、持続可能な社会の実現に貢献することは、社会インフラを担う者としての責務であると考えています。高速道路の安全・安心の確保、ネットワークの強化、地域との連携、環境経営等、当社グループのあらゆる事業活動を通じて、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組みを推進し、国連が採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献してまいります。

おわりに

これからも、事業活動を通じて、お客さまや、沿道地域の皆さまをはじめとした社会、投資家・国民の皆さま、お取引先、グループ社員等、様々なステークホルダーへの責任を果たすことに努めていきます。皆さまには、本レポートやNEXCO西日本グループの今後の活動に対して、忌憚のないご意見を賜りますよう、お願い申し上げます。

2023年6月

西日本高速道路株式会社
代表取締役社長

前川秀和