高速道路を取り巻く経営環境は、時代の流れとともに変化しています。大きな変化の1つ目として、まず、高速道路の新たな更新・進化事業の必要性の高まりがあります。高速道路では、定期点検や点検技術の高度化を踏まえた詳細調査により、更新が必要な箇所が新たに判明しています。また、災害対応力の強化等のための暫定2車線区間の4車線化や耐震補強をはじめ、自動運転や電気自動車(EV)への対応など、社会的要請を満たすための高速道路の機能向上、つまり「進化」が必要となっています。これらを受けて、2023年5月の道路整備特別措置法等の改正により、高速道路の料金徴収期間を最長で2115年まで延長できるようになりました。これは高速道路を健全かつ利便性の高い状態で、将来の世代に引き継いでいくための重要な制度変更です。2024年3月には、料金徴収期間を延長し、新たな更新・進化事業について国土交通大臣の事業許可を受けました。引き続き、構造物の老朽化、災害の激甚化、社会・経済構造の変化等に対応すべく、最新の技術と知見を取り入れ、迅速かつ計画的に事業を進めてまいります。
2つ目としては、建設業・運送業における時間外労働の上限規制などの実施に伴う、いわゆる「2024年問題」があげられます。建設業については、建設業界の皆さまと意見交換や現地ヒアリングを重ね、下記のとおり4つの柱を取りまとめ、2024年3月に工事管理スリム化ガイド『4-you』と行動宣言を策定しました。引き続き、建設業界の皆さまと連携し、効率化・省力化に取り組むとともに、現在と将来の担い手のために、建設業の働き方改革と工事円滑化を実現してまいります。また、物流業界の皆さまとも連携し、新規建設・4車線化事業等の推進や、休憩施設の大型車駐車マスの拡充、短時間限定駐車マスの実証実験などの取り組みを進め、物流効率化を目指してまいります。
経営環境の変化としては、もう1つ、コロナ禍の収束があります。交通量は2023年度で概ね回復に至りましたが、人々の移動が活発化し、観光需要等が再び高まったことにより、渋滞対策やオーバーツーリズム対策等の必要性が日に日に増しています。当社グループとしては、ドライブパス(周遊パス)の平日利用の利便性向上や休日割引適用除外日の設定等により、観光振興と観光需要の分散化・平準化の両立に取り組んでまいります。
このように、我が国の生活・経済活動や文化活動を支える重要な社会基盤である高速道路は、刻々と変化する社会に柔軟に対応し、「進化」し続けることで、社会の持続的な発展に貢献し続けることが重要な役割であると考えています。2024年度は、中期経営計画『進化2025』の4年目として、着実に事業を推進し、新たな技術と知見を活用し、当社グループと高速道路の進化をさらに加速させることで、社会インフラとしての使命を果たしてまいります。
民営化後最大規模の事業量が継続する中、中期経営計画「進化2025」を着実に推進するため、「経営資源の柔軟かつ最適配分」、「多様な人財の活躍」、「更なる生産性の向上」の3つの柱からなる「進化に挑む重点方針」を基本として、会社全体の業務執行能力の向上に取り組んでいます。生産性向上にあたっては、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が不可欠です。当社グループでは、DX戦略を「NEW ACE DXs(先進的な挑戦と進化がDX戦略を推進する)」(※)と定めており、2024年度は「DX実装の拡大の年」として、業務処理の効率化だけでなく、業務・サービスの高度化にもDX対象領域を拡げ、更なる生産性の向上を実現してまいります。
※ NEW ACE DXs:「NEXCO West」の頭文字と「Advanced Challengeand Evolution will drive DX strategy(先進的な挑戦と進化がDX戦略を推進する)」からなる当社グループのDX戦略の略称
当社グループにとっての最大の資産は、高速道路を建設・管理するノウハウの集合体である社員そのものです。時代の変化に合わせて高速道路を進化させ、未来を切り拓いていく「人財」を育成することが、当社グループと社員一人ひとりの成長にとって重要と考えています。そのため、多様なライフスタイルに合わせて社員が自らキャリアを選択し、長く働き続けることができる環境整備に取り組んでいます。
私たちは、多様化する地域課題に対し、地域と連携して地域創生を目指す取り組みとして、「地域共創」活動を行っています。当社グループと地域の自治体や企業がお互いのリソースを活かし合い、観光・文化・産業などの地域の価値を引き出すことで、持続可能な地域づくりにチャレンジする取り組みです。高速道路の持つ機能やサービス、当社グループが持つノウハウやつながりを活用し、地域の新しい魅力をつくり・発信することで、人と地域をつなげ、観光振興や交流人口を増やすことが可能になると考えています。引き続き、「地域づくりのプラットフォーマー」を目指して、地域共創活動に取り組んでまいります。
2008年から環境経営を推進しており、「環境基本計画2025」では「脱炭素社会の実現」「循環型社会の形成」「自然と共生する社会の推進」を3つの重要テーマとして定め、事業活動の様々な側面におけるアクションプランを立て、環境負荷の低減に取り組んでいます。また、世界的に気候変動対策の重要性が高まる中、当社グループにおいても、カーボンニュートラルの実現に向けて、円滑な交通確保を通した二酸化炭素排出量の削減、電気自動車急速充電設備の増設や、道路空間を活用した省エネルギー化等を推進し、2030年度までに温室効果ガス排出量を50%以上削減することを目標として、取り組みを推進しています。
当社グループでは、CSR活動方針を「事業活動を柱として、社会の持続的な発展に貢献します」と定めています。高速道路の進化に挑み続けることにより社会インフラの機能を更に高め、我が国の持続的な発展と豊かな未来の実現に貢献することが、NEXCO西日本グループの使命であり、社会的責任であるからです。これは、グループ理念「私たちは、高速道路の安全・安心を最優先に、高速道路の進化に挑み続け、地域の発展と豊かな未来の実現に貢献します」にも共通する精神であり、持続可能な社会の実現に貢献することは、社会インフラを担う者としての責務であると考えています。高速道路の安全・安心の確保、ネットワークの強化、地域との連携、環境経営等、当社グループのあらゆる事業活動を通じて、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する取り組みを推進し、国連が採択した「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成に貢献してまいります。
これからも、事業活動を通じて、お客さまや、沿道地域の皆さまをはじめとした社会、投資家・国民の皆さま、お取引先、グループ社員等、様々なステークホルダーへの責任を果たすことに努めてまいります。皆さまには、本レポートやNEXCO西日本グループの今後の活動に対して、忌憚のないご意見を賜りますよう、お願い申し上げます。
2024年6月
西日本高速道路株式会社
代表取締役社長
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