工事における低価格入札への対応状況について
― 「工事契約価格適正化制度」見直し1年後の運用状況 ―
平成23年1月24日
西日本高速道路株式会社
NEXCO西日本(大阪市北区、代表取締役会長兼社長:西村英俊)は、平成19年4月から「工事契約価格適正化制度※)」(以下、「本制度」という。)を独自導入し、その厳格な運用に取り組んでいるところですが、平成21年12月から、本制度の適用範囲拡大による運用強化並びに調査の迅速化を図ることを目的とし、「(1)最低制限価格の導入」、「(2)適正契約基準価格の引上げ」、「(3)工費内訳の調査基準を設けて簡易調査を導入」という見直し(以下、「新制度」という)を行いました。
このたび、新制度導入後約1年が経過し、低価格入札の状況と本制度の運用結果をまとめましたのでお知らせします。対象とした発注工事件数は、平成21年12月21日以降に入札公告を行い、かつ平成22年12月31日時点で契約締結済の225件です。
工事契約価格適正化(新制度)のイメージ図
※)工事の品質確保、安全対策の徹底及び工事下請け会社への不当なしわ寄せの排除を目的に、さらには健全な工事執行体制の構築と高速道路の建設・管理事業全般の技術力の維持向上を図るために導入した制度で、適正契約基準価格を下回る入札者に対して厳格な調査を実施。
低価格入札の発生状況及び「工事契約価格適正化制度」の運用結果の概要
低価格入札の発生状況について
低価格入札(低入札基準価格を下回る入札者があった案件)の発生率は約64%(143件/225件)であり、過去(平成19年:29%→平成20年:31%→平成21年:53%)と比較しても引き続き増加傾向にあります。また、ほぼ全ての工種において低価格入札が発生しており、特に、土木工事、舗装工事、橋梁上部工工事など道路本体を構築する主要工種においては、更に低価格入札の発生率の増加傾向が強まっています。これは、公共事業が減少傾向にある中で受注を確保しようと入札参加者が過当競争を展開していることが主原因であると考えられます。
新制度における運用結果について
- 最低制限価格の導入により、審査を実施することなしに自動失格とした案件が16件(件数比率7%)あり、会社数では35社です。このことから、最低制限価格の導入により調査の迅速化に効果を発揮していると考えられます。
- 適正契約基準価格を下回り、審査の対象となった案件の発生率は約36%(80件/225件)であり、過去(平成19年:13%→平成20年:13%→平成21年:21%)と比較しても著しく増加しています。土木工事や舗装工事、塗装工事、造園工事においての審査対象案件発生率が特に高い傾向となっており、上述の低価格入札発生の要因に加え、新制度の導入により適正契約基準価格が引上げられた(約75%→約80%)ことが審査対象案件発生率の増加につながったものであると考えられます。
また、平均落札率については、過去と比較しても大きな差は無く、90%弱で推移しています。
- 適正契約基準価格を下回り、審査等により結果として入札を無効とした会社は合せて152社であり、これらの排除率は約89%(152社/171社)です。適正契約基準価格の引き上げもあり審査対象案件数の増加はありましたが、審査対象の審査後排除率は、従来同等の約9割程度となっています。
- 簡易調査注)の導入については、審査を行った会社のうち簡易調査の比率が約6割(37社/66社)となりました。しかし、簡易調査の導入により調査項目の一部を省略することで、調査事務の迅速化を期待していましたが、標準調査に対して顕著な迅速化は見られませんでした。
注)現場に直接係る経費について、内訳の調査基準を設け、基準を満足すれば調査を簡略化
当社といたしましては、引き続き工事契約価格適正化制度の効率的な運用に努めるとともに、本制度の運用状況を更に分析した上で、最低制限価格の基準及び適用工種の妥当性ならびに簡易調査実施手法等の再検証を行い、本制度のあり方や契約制度等に関して更なる改善検討を引続き行う予定です。
■低価格入札発生状況
- ※1)
- 平成21年12月21日以降に入札公告を行い、かつ平成22年12月31日時点で契約締結済の案件
- ※2)
- 平成21年度案件のうち旧制度適用分
■審査結果
- ※3)
- 審査を実施した会社のうち、無効とした会社の比率新制度においては、最低制限価格を下回り自動失格となった会社数を含む
- ※4)
- 無効としたした152社のうち、最低制限価格を下回り自動失格となった会社は35社
■無効とした理由(新制度導入後)
自動失格 |
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35社 |
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資料提出なし |
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67社 |
- 適正契約基準価格を下回り資料提出要請をしたが、提出期限までに資料提出がなかった。
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資料提出あり |
工費内訳
審査基準 |
3社 |
- 入札金額の工費内訳が、下記の工費内訳審査基準(積算金額の工費内訳)のいずれかを下回った。
- (直接工事費+共通仮設費)*0.75
- 現場管理費*0.6
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直接工事費 |
33社 |
- 労務費、材料費の安価低減理由の根拠が、妥当であると認められない。
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諸経費 |
14社 |
- 共通仮設費、現場管理費、一般管理費等の内訳が添付されておらず審査が不能。
- 著しく低く設定されている費用について、具体的な低減根拠が妥当であると認められない。
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計 |
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152社 |
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参考資料