箕面トンネルで非排水構造を採るということは、相当な湧水対策がなされるものという期待をしている。箕面トンネルについては「日本一の湧水対策をする」というような表現が出来るのか?
箕面トンネルは、既に存在している箕面グリーンロード(事務局注:箕面有料道路[大阪府道路公社]のトンネルをさす)よりも高いところを通ることになる。
このような位置関係にある場合には、過去の事例からも高いところのトンネルの湧水は、低いところのトンネルに比べて小さいものとなっている。よって両者が近接する五月山断層の西坑口周辺は影響が小さいと考えられる。
箕面川付近は地質が良いものと想定している。
したがって、勝尾寺川に重点をおいて対策を講じるという考え方は妥当である。
これまでの実績では、非排水型のトンネルを採用している所の水圧は125mとか80mであり、ほぼ防水性能を確保している。ただし、それ以上の水圧については実績がないため、1MPa(水圧100mに相当)程度というのが技術的限界の一つの目安と考えている。今回、非排水構造のトンネルを採用しようとしている勝尾寺川区間では、一部1MPaを超えたところについても検討しており、非常に高度な技術を採用していくということになる。
断層があり土被りの薄い勝尾寺川については十分な対策が必要である。
今回、勝尾寺川においては、トンネルを掘る際に、上流で一度水を止めておいて、その水を迂回させて下流まで流すということを考えている。
また、ウォータータイト(非排水)構造を採用し、トンネル内に水が漏れないようにしている。同様のウォータータイト構造を採用し沢水を落とさないよう施工した事例は少ない。
さらに、基本方針にもあるように、トンネル掘削の際には、トンネルの前方に先進ボーリングを掘って、湧水の状況を調査しながら、注入工などの対策によりトンネルの中にできるだけ水を取り込まないようにする。
以上のようなことから、現在ある最先端の技術で、勝尾寺川の水量を守ろうとしているのは間違いないと思う。
北摂霊園付近で、湧水が出る結果になっている。箕面グリーンロードの実績からは推定できないと書かれているが、どのように推定しているのか?
現地踏査、弾性波探査、電気探査、さらには同様の地質で透水係数を求めたものを参考に、透水係数を決めている。その結果、この北摂霊園の貫入岩のところは、透水性が高いものとして解析をしている。
この箇所にも、非排水構造を採用することは出来ないのか?
この付近は土被りが300m程度と厚く、水圧が大きいため非排水構造は採用できないと考えている。ただし、慎重に掘り進めるという意味においては、必要に応じて薬液注入などを行って湧水の抑制を図っていく。
いろいろと経験した者の立場で言うと、ここの地質調査の結果としてこういう解析をしているが、実際はこの想定した通りの地質が出てくる場合もあれば、出てこない場合もある。その為に、トンネルの切羽から出来るだけ長めの探りをいれると良いと考えている。1000m程度の先進ボーリングをやれば、工事の早い段階で「どうやったらいい」という判断が出来るようになる。そういったことをやると日本一の工法と言えるだろう。
そして、水圧が100m程度であれば、相当費用はかかるが、なんとか湧水を抑え込むことは今の技術であれば可能になってきている。ところが、300m程度にもなると、水を完全に抑え込むことは無理なので、注入等で岩盤の隙間を埋め、例えば100出るものを10や5に抑制しトンネルを掘進する。そういうことをやりながらというのが、「先進ボーリングをしながら」という表現の中にある。必ずこの北摂霊園付近に断層があるということでもなく、全然予想してない所に出てくることもあるので、先進ボーリングでこれから先はやらせてもらいますという意思表示をしていると解釈していただければと思う。
トンネルの掘削によって地下水位が10m以上低下することが想定される範囲として図が示されているが、これは浅い層の地下水と深い層の地下水のどちらになるのか。
この図は、トンネル掘削に伴う深層部の地下水の動きを予測している。
以前、萩谷トンネルについては中間解析という形で90m~120m程度下がるという報告があったが、深い層の地下水がそれだけ下がるとなると、地下水位が下がる範囲というのは相当広がるのではないか。今回、地下水位低下量10mという事で示しているが、例えばこれが5mなり3mの範囲だと、どこまで広がるのか。高槻の場合、井戸水を使っている所がかなりある。農業用水や飲料水、さらには南の方で工業用水やお酒を造っている所もあるため、そういった所まで影響が広がるか気になる。
まず、この地下水解析の結果の取り扱いで、どこまでを影響が想定される範囲とするかについてということだが、実測の季節変動が大体20m程度あることから、その半分の10m以上としている。 最新の知見で解析しているとはいえ、地質をマクロ的にモデル化しており、解析結果もマクロ的な挙動を把握するものであるため、10mといったものを一つの目安として影響が出る範囲と想定している。
飲料水や工業用水、高槻のお酒を造っている南の地域は、相当距離が離れており、影響が広がるとは考えていない。なお、解析にあたっては、影響が無いと十分考えられる所である山の分水嶺や河川を境界として解析の領域を想定しており、解析範囲外である南の方の工業地帯にまで影響はないと言い換えることもできる。
萩谷トンネルに関しては、トンネルを横断している河川は山の頂上付近であり、先程の勝尾寺川のように、トンネルが横断する所からさらに上流側に大きな沢がずっと続いていない。したがって、ここの場合にはトンネルが通過する尾根の近くの水位を下げたとしても影響は限定されたものになり、影響範囲で示している所に降った雨がトンネルの中へ入っていく可能性があるという程度で、それ以上の影響にはならない。また、トンネルに出てきた水は河川本流の方に流れて行き、水が蒸発してしまうわけではないため、下流に関する水収支は、トータルすればそれほど影響は無いと考えて良いと思う。
成合の切土について、他のトンネルとは違って湧水量の記載が無いのは、どのように考えれば良いのか。
切土については、オープンで掘削する所であるため、湧水量は表現していない。
ここには、深い地下水という注釈がないが、近くにある井戸に影響がないのか。
井戸等は切土部より低い山の麓の低地にあり、ほぼ影響がないと考えている。
(資料1 P.4)基本方針の「山の深部の地下水と上部の浅い層の地下水は独立に存在しています」について、箕面グリーンロード等については分析結果が示されているが、萩谷についても同じと解釈してよいか。
萩谷トンネルについても、ボーリングを数箇所実施しており、その結果から複数の帯水層を確認できるものがある。路線全体について言えるという事でまとめている。
引き続き、3点ほど質問がある。
(資料1 P.4)「2.影響があった場合の措置」について、利水間関係者のひとつとして「農業用水等」の「等」の中に、芥川の漁協も含まれるのか。
また、対策工がいくつか書かかれているが、水道や溜池について、出来上がったものの管理はどうするのか。
最後に、トンネルの湧水に自然由来の重金属-砒素等-が含まれていて、どこかに返水する時に基準値を満たさない場合はどうするのか。
一点目、芥川の漁協等についても、影響があるということになれば関係機関と当然協議をしていく。
二点目、水環境への影響があった場合の措置として考えられる水道や溜池等についての移管方法・管理方法については、関係行政と協議させていただく。
最後の、トンネル湧水に含まれる自然由来の重金属の処理については、法律や条例等の基準を遵守して適切に対処していきたい。今後そのような場合に備え、具体的な湧水の処理方法を検討する予定であり、過去の事例等を調べるとともに、関係行政と協議させていただき、またこのような場で説明したい。
箕面グリーンロードの湧水は貫通時点で毎分11トン弱程度、現在6トン程度で推移しており、いくつかの河川に返水している。箕面トンネルの掘削による箕面有料のトンネル湧水への影響はあるのか。
箕面グリーンロードの方が箕面トンネルより下にあるので、箕面グリーンロードの湧水への影響は小さいと思われる。